2013年6月5日水曜日

佃煮のあれこれ/調味料歳時記

浅蜊の佃煮は調味料を使った保存食。浅蜊は今頃が旬の名残(旬の最終盤)ですが、潮干狩りはまだ楽しむことができます。潮干狩りは春から初夏のレジャーですが、江戸時代でも浮世絵にも描かれるほどです。江戸時代の書物『東都歳時記』には人気スポットとして佃島沖が登場します。


「本能寺の変」の際、徳川家康は苦境に遭遇。その時家康公を助けたのが、摂津・佃村(現在の大阪府西淀川佃)の漁民でした。川を渡る船と、備蓄していた小魚煮を道中食として提供。その縁がもとで佃村の漁民を江戸に呼び寄せ、特別に漁業権を与えました。彼らが移住した土地が佃島。まさに「佃煮」発祥の地です。(諸説あるようです。)江戸前の新鮮な魚を幕府へ献上し、残った雑魚で商いをしていました。漁に出れない時のために、雑魚を醤油炊き(当初は塩味であったが佃煮は、すでに普及していた醤油やみりんなどで煮詰める)して保存し、それを売り出します。そのうち雑魚だけではなく、他の小魚も煮込みます。佃煮は、日が経つにつれ味がなじみ美味しくなることに気がつき、それが江戸の名物に発展します。さらには参勤交代の武士が江戸土産として国元に持ち帰ったことで全国に広まったとされます。

明治時代に入り、西南戦争・日清戦争・日露戦争などでは工場での生産体制が発展し軍事食へ、戦後帰宅した兵士が戦場で食べた江戸前の佃煮になじんだことで一般家庭にも広まっていきます。塩・味噌・醤油などは素材を保存するのに適している故に、
調味料は兵糧とともに発展してきた過去があります。

ちなみに佃煮には名称が何種類かありますが、それぞれ独自の文化があったようです。
佃煮  /小魚、貝類など醤油、砂糖、みりんなどで味濃く煮しめる
甘露煮 /小魚や果物など砂糖とみりん、または蜜、水飴などで甘味をつける
しぐれ煮/貝類などにしょうがなどの香味を加えてたまり醤油で煮しめる
くぎ煮 /関西で小女子の佃煮のことをさびた釘に似ているためくぎ煮と呼んでいる

保存食としての重要なことは煮込みと冷却があることです。煮込むことによって原料の水分が調味液と置き換わり、味付けと同時に脱水がおこなわれます。冷却することで水分を蒸発させ、原料に調味液の皮膜をつくることで保存性を高めます。さらに醤油に熱が加わることにより香りが一層引き立ち、中に含まれている多種類のアミノ酸等が反応してうまさを出します。佃煮は、あのしょっぱさが日本人の主食であるお米と相性が良く、江戸の郷土料理です。

流山市・森のマルシェのfacebook『調味料歳時記』というコラムを執筆しています。このブログと相互リンクされていますのであわせてご覧ください。(2013年6月1日(土)つくばエクスプレス/流山おおたかの森駅前にて森のみりんマルシェというイベントが開催され、みりんのワークショップを担当しました。)
http://www.facebook.com/morinomarche