2013年7月2日火曜日

江戸の調味料と鰻/調味料歳時記

今年は季節の移ろい早いので、もうすぐあのギラギラした夏がやってきますね。夏の食べ物の代表格は、みりんと醤油の「鰻の蒲焼き」。元来、鰻は頭から尻尾に串を刺して塩焼きにしていました。「蒲(がま)の穂」に姿かたちが似ていることから「蒲焼き(がまやき)」と呼ばれた説、焼けた皮の色が樹木の樺(かば)の幹に似ているという説など、「蒲焼き(かばやき)」と言われるようになった理由には諸説あります。

日本では、太古の昔(万葉集にも記載あり)から鰻が食べられていました。江戸時代、当初は塩焼きで食した鰻。タレをよりしみ込ませるため現在のように開いて焼く様になりました。紀州との交流があった千葉県銚子で醤油づくりが始まり、野田に広がり、それに流山のみりんが加わりました。照りや香り甘味が加わったことで味も格段に良くなり、江戸の鰻の蒲焼きは完成されたようです。江戸っ子がつくりあげた味です。寿司でよく言われる「江戸前」という言葉は、元々「江戸前鰻(えどまえうなぎ)」のことを意味していました。特に隅田川・深川で捕れたものは「江戸前」の中でも上物とされ、利根川産は「江戸後(えどうしろ)」、遠くから運んだものは「旅鰻(たびうなぎ)」と区別していたそうです。


調味料歳時記で何度も取り上げられる関東と関西で違う食文化。まさにそれの代表が鰻の調理法です。
関東では、背開き→素焼き→蒸す→再び焼く、蒸すから柔らかい。
関西では、腹開き→焼く→パリッと香ばしい。
武家社会の関東では切腹に通じることのない「背開き」、商人が多い関西では腹を割って話せるということで「腹開き」をするという説があります。でも、関東では蒸す工程があるため、背開きにしたほうが身の厚い背中側に串をさせ、調理中に串が抜け落ちることがないということです。

『土用の丑の日」といえば、「うなぎ」です。そもそも「土用」とは、中国の陰陽五行説による季節の移り変りを表す節目です。各季節の末(立春/立夏/立秋/立冬)前の約18日間が土用であるため、一年に4回あります。では「丑に日」は?かつては十二支は日常的に日付・時刻・方角にも用いられてきました。なので、12日に1回やってくる丑の日と土用が重なるときが「土用の丑の日」となります。巡り合わせによっては、今年2013年のように2回になる(7月22日/8月3日)こともあります。でも、なぜ土用の丑の日に鰻を食べるようになったのか。江戸時代の蘭学者・平賀源内が夏場の営業不振に悩んでいた鰻屋に相談され、「本日、土用の丑の日」と張り出したところ大繁盛したのが始まりとされ、その後土用うなぎブームが広がったという説が有力のようです。なんだかバレンタインデーと同じような感じだったのですね。

夏は食欲が衰退し、体調をくずしがちになります。鰻は抵抗力を高めるビタミンA・Eを含み、また疲労回復に効果がある、B1・B2・血液をさらさらにするDHA・IPA・ミネラルなどスタミナ補給にぴったりです。現在日本で食されているものは99%養殖もの。けれど養殖技術の向上とともに、味がよく天然物にも負けない鰻が主流となりました。ちなみ天然物は産卵に向けて脂ののった秋が旬ということです。そもそも鰻の稚魚は、マリアナ諸島で生まれた後、海流にのって日本にやってくるそうです。その生態には謎が多く、解明されていないとのこと。先日TVのニュースでニホンウナギを絶滅危惧種としてリストに載せるか検討を始めるとありました。消費者としてはすこしでも安く美味しい鰻が食べたいですが、限られた資源、大切にしていきたいですね。

流山市・森のマルシェのfacebook『調味料歳時記』というコラムを執筆しています。このブログと相互リンクされていますのであわせてご覧ください。(2013年6月1日(土)つくばエクスプレス/流山おおたかの森駅前にて森のみりんマルシェというイベントが開催され、みりんのワークショップを担当しました。)
http://www.facebook.com/morinomarche