2014年3月10日月曜日

みりんの色イロ/調味料歳時記



みりん道を極めるために数本買い揃えてみました。本みりんは豊潤で飲んでも美味しい調味料です。まずは飲み比べしようと酒杯にいれたところ、黄金色のみりんグラデーションができました。それぞれを注いで並べてみてビックリ、「本みりん」と呼ばれる商品だけでもこの色の違いがあるのです。


この飲み比べでは、色を楽しむ「視覚」・香りを楽しむ「嗅覚」・飲んで楽しむ「味覚」・商品を手に取って楽しむ「触覚」・注ぐ時の音「聴覚」、みりんを五感で楽しむことができました。

つぎの色イロは、種類についてです。
□本みりん(旧式みりん)
伝統的製法。原材料はもち米・米麹・乙類焼酎のみ。糖化熟成させるため醸造・熟成期間(短いものでは1年、長いもので10年)は長い。

□本みりん(新式みりん)
工業的製法。戦後に行われるようになった製法。甲類焼酎を使用し、糖類を加えることもある。熟成期間は40日から60日と短い。
旧式・新式ともにアルコール分は約14%。塩分なし。酒税法での規制あり。

□発酵調味料(料理酒など)
原材料の塩が特徴。塩が添加されていることによって酒税の課税対象にはならない。
アルコール分は約14%前後。塩分約2%。酒税法の規制なし。

□みりん風調味料
戦後にできた調味料。本みりんとは原材料が大幅に違う。本みりんより生産コストが安くすむため低価格で買うことができるが、アルコールの調理効果は期待できない。
アルコール分は1%未満。塩分約1%未満。酒税法の規制なし。

醤油や味噌と同様にみりんも原材料・製法などによって様々ですね。調味料は違いを知ることで色イロ見えてくることがあります。今後も精進します。

日本野菜ソムリエ協会 調味料マイスター養成講座ブログ
『さしすせそ道を極める』2013年5月15日分 <再掲載>

2014年2月5日水曜日

ひなまつり/調味料歳時記


節分で、厄を払い清めたあとに飾る「ひな人形」。女の子の健やかな成長や幸福を願う行事で、三月が桃の季節であること、また桃は邪気を祓う力があると言われていることから、「桃の節句」とも言います。ひな人形を飾り、桃の花、ひなあられ、ひし餅、白酒を供えます。そしてはまぐりのお吸い物など、春の訪れを伝える旬の食材を使った縁起のよいお料理をいただきます。

白いお酒を甘酒と思われている方が多いのではないでしょうか?元々は中国の風習を基にした「桃花酒」が飲まれていましたが、江戸時代になって「白酒」が登場しました。もち米や米麹などを「みりん」に加えて一ヶ月ほど熟成させ、できたもろみを搾らずにすりつぶして造ったものが白酒です。白酒はアルコール度が10%前後の甘みが特徴の大人の飲み物なのです。



写真の白酒は白酒の元祖と言われている『豊島屋』さんで購入。購入すると箱に入っている、長谷川雪旦が描いた、『「江戸名所図会」〜鎌倉町 豊島屋酒造白酒を商ふの図〜』がなんとも興味深いです。
Wikipediaによると、
〜「酒醤油相休申候」の看板を掲げ、当日は他の商品は販売しなかった。あらかじめ切手を買わせ、左側の扉を入口、右側を出口とし、一方通行に並ばせた。入口上には櫓を設け、気分が悪くなった客のために屋根上に鳶と気付け薬を持った医者を待機させた〜
とあります。豊島屋さんに人々が押し寄せ、白酒を買い求める姿が手に取るようにわかります。

華やぐひなまつりの宴には、縁起のよいお料理が並びます。

はまぐりのお吸い物・・・はまぐりの貝殻は、対の貝殻でないとぴったりと合いません。そのことから相性のよい夫婦を表し、一生添い遂げるようにという願いが込められています。

菱餅・・・緑、白、紅、3色の餅を菱形に切って重ねてたもの。緑は「健康や長寿」、白は「清浄」紅は「魔除け」など、色の意味は諸説あるようです。そして下から緑・白・紅の順に重ねます。

ひなあられ・・・菱餅と同じ3色の「ひなあられ」も定番ですね。調味料歳時記の恒例、関東と関西の違いシリーズ、ひなあられにもありました。関東は米粒大で甘い、関西は直径1㎝程度の大きさがあり、塩味などだそうです。

大人になってもひなまつりって女子にとっては楽しみですね♪

2014年1月7日火曜日

鏡開きと食文化/調味料歳時記


新年明けましておめでとうございます。本年は、調味料マイスターとしての活動を、瑞々しく芽吹くかせたいと思っています。

早いもので年が改まってからもう7日。今日は無病息災を願い七草粥を食べる風習があり、五節句の一つとされています。松の内の最後の日にあたり、お正月のご馳走に疲れた胃腸をいたわる、ちょうどよい食べ物ですね。

そして、もう一つ、お正月に迎えた歳神様を送り出す「鏡開き」。お供えした鏡餅を家族でいただき、一年の無病息災を願います。元々は武家から始まった行事。刃物ではなく木槌で開く(割る)のが縁起の良いこととされています。お餅を下げる日は地方によっても違いますが、一般的には1月11日にお汁粉やお雑煮を食べる伝統行事です。



小豆で作った餡に砂糖を加え煮たものに、餅などを入れたものが「お汁粉」の主流。当初は甘いものではなく、塩味で調理され酒の肴として用いられる事もあったそうです。寒い日には、体をとても温めてくれる甘〜いお汁粉。甘味処などでは、塩昆布や漬物など、塩味の濃いものを添えて出されます。これは、甘味を際立たせるための工夫。砂糖が貴重だった時代の名残とも言われています。

調味料歳時記の恒例、関東と関西の違いシリーズ、今回は「お汁粉」と「善哉」。またもや、今回初めて知ったことのでしたのでビックリしました。「汁粉」は、「汁(しる)」は“つゆもの”、「粉(こ)」は“実”をさし、具の入った汁を総じて「汁粉」と呼んでいたそうです。「善哉」は、仏語で「喜び祝う」という意味。年の初めに、餅を食べて祝い、その餅を「善哉餅」とし、これを小豆汁に入れたものを後に関西で「善哉」と呼ぶようになった、と言われています。

江戸時代中期に流行したと言われ、小豆の粒あんや、こしあんを使って作りますが、地方や家庭によっても違いがあるようです。関西は粒あん・こしあん、関東は汁気のある・なしで区別。関西では粒あんで汁気があるものが「ぜんざい」。こしあんで汁気があるものを「おしるこ」と呼ぶ。汁気のない粒あんの場合は「亀山」などと呼んで区別している。それに対して関東では汁気があれば「おしるこ(お汁粉)」とひとくくりにする。粒あんを使っていたら「田舎汁粉」「小倉汁粉」、こしあんを使ってたら「御膳汁粉」という具合。汁気がないあんを餅や白玉に添えると「ぜんざい」。

関東 ◇汁気あり
      粒あん ・・・おしるこ(田舎汁粉/小倉汁粉)
      こしあん・・・おしるこ(御膳汁粉)

   ◇汁気なし・・・ぜんざい

関西 ◇汁気あり
      粒あん ・・・ぜんざい
      こしあん・・・おしるこ

   ◇汁気なし・・・亀山

 関西から江戸に広がった食べ物であるとも考えているようですが、呼び名が分かれた経緯を示す文献はないようです。ちなみに、関西のぜんざい・おしるこの違いが正しく伝わらなかったとの説もあります。

鏡開きのお餅は、お雑煮にもしますね。こちらはお汁粉以上に、地方それぞれの風土が多様性が生まれています。

流山市・森のマルシェのfacebook『調味料歳時記』というコラムを執筆しています。このブログと相互リンクされていますのであわせてご覧ください。(2013年6月1日(土)つくばエクスプレス/流山おおたかの森駅前にて森のみりんマルシェというイベントが開催され、みりんのワークショップを担当しました。)

2013年12月19日木曜日

冬を乗り切る知恵/調味料歳時記


2013年最後の調味料歳時記は、流山が誇る調味料「みりん」を使った冬至のかぼちゃ(南瓜)です。かぼちゃ本来の自然な甘さを味わえる、かぼちゃの含め煮はいかがでしょうか。冬至とは、一年中で昼が一番短く夜が長い日で、今年は来週の12月22日です。

農耕民族である日本人。太陽の恵みが弱まることは、自らの生命が弱まるものと考えました。そのため「一陽来復」といって邪気をはらう儀式をしました。かぼちゃを食べるのはその一つとされています。



なぜ、かぼちゃを食べるかについては、諸説あります。かぼちゃを漢字で書くと「南瓜」ですが、これは「なんきん」とも読みます。運を呼ぶ一つの考え方で「北から南へ=陰から陽へ向かう」ことを意味していると言われています。さらに「ん」のつくものを食べると「運」が呼び込めるとされています。でも実は、かぼちゃの旬は夏。古の人々は夏に収穫し、長く保存できるかぼちゃを冬場の大事な栄養源としました。カロテンやビタミンAが豊富に含まれ、粘膜を保護する効果があります。風邪をひきやすい冬には貴重な食材でした。

そして、冬至の日のもう一つの言い伝えである「ゆず湯」。この日にゆず湯に入ると、一年中風邪をひかないと言われています。ゆず湯は、湯につかって病を治す湯治(とうじ)にかけ、ゆずには融通が利くようにという願いも込められていおり、また強い香りが邪気を祓うとも考えられており、江戸の庶民から生まれた習わしだったそうです。

ゆずに含まれる成分には新陳代謝を活発にして血管を拡張させて血行を促進し、からだを温める効果があり、それが風邪予防、冷え性の緩和にもよいとされています。さらには、果皮に含まれるクエン酸やビタミンCによる美肌効果もあります。香りによるリラックス効果もあり、「ゆず」は冬を乗り切るための万能アイテムです。

「かぼちゃ」や「ゆず」の効果/効能などはいまは科学的に証明することはできますが、古の人々はこれらを経験や知恵などで生み出してきました。こういう風習はずっと後世まで伝えていきたいですね。

流山市・森のマルシェのfacebook『調味料歳時記』というコラムを執筆しています。このブログと相互リンクされていますのであわせてご覧ください。(2013年6月1日(土)つくばエクスプレス/流山おおたかの森駅前にて森のみりんマルシェというイベントが開催され、みりんのワークショップを担当しました。)
http://www.facebook.com/morinomarche

2013年11月5日火曜日

七五三とあめ/調味料歳時記


11月15日は、子供の成長を祝う行事である「七五三」ですね。

七歳女児/「帯解き(おびとき)」
帯の代わりに付け紐を取り、初めて帯を結ぶ儀式。
五歳男児/「袴着(はかまぎ)」
五歳になった男児が初めて袴を履く儀式。
三歳男女/「髪置き(かみおき)」
赤ちゃんから幼児への成長のお祝い。それまで剃っていた髪の毛を幼児にふさわしい髪型にかえる儀式。
上記のように、そもそも、七五三は武家社会での風習でした。始まりは徳川幕府五代将軍、徳川綱吉あたりから執り行われた行事のようです。

晴れ着を着て、手には「千歳飴」と書かれた長い紙袋。飴の細く長い形状には、子供の長寿という願いが込められているのです。その袋にも鶴と亀・松竹梅が描かれている、縁起の良い紅白の飴。江戸時代の浅草寺で、紅白の棒状の飴を「千年飴」と名付けて売り出されたことが、千歳飴の始まりとされています。



甘い味の水「あま水」や「あま味」という言葉から「飴=あめ」という言葉が生まれました。つまり「飴」という言葉の語源は「甘い」なのです。
砂糖や蜂蜜よりも歴史は古く、古来はツタの一種「あまかずら」を細かく刻み、しずくとなって落ちる液体を煮詰めた甘い水を甘味料として使用していました。固形の飴が出回るようになる江戸時代以前は「水あめ」が主流で、調味料としての役割、甘味料として使うことが多かったようです。江戸時代以降は砂糖も高級品ながら、少しずつ一般に広まりあめはお菓子として扱われるようになりました。「飴」は日本古来の伝統的な調味料であり、お菓子といえるのですね。

神社で七五三の光景に出会うと、こちらも思わず笑顔になります。こういう甘くて幸せな風物詩を、大切にしていきたいですね。

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2013年10月7日月曜日

秋の味覚と調味料/調味料歳時記


暑かった夏もようやく終わり、すっかり秋めいてきましたね。秋は新米、果物など、様々な食材に恵まれる季節。この時期、海の幸の代表格といえば「秋刀魚」です。 

秋刀魚が広く食べられるようになったのは、江戸中期。今のように流通が発達していない時代は、輸送にとても時間がかかりました。そのため腐敗防止対策として、塩が振られていました。その塩がなじみ、ほど良い加減で焼いたのものが「秋刀魚の塩焼き」です。脂ののった秋刀魚の塩焼きに大根おろしを添え、お醤油をたらし、すだちを絞る。これぞ秋の味覚。「塩」と「醤油」、そして特産地徳島県では万能調味料ともいわれる「すだち」。実は秋刀魚と調味料の関係は、とっても深いのです。



秋刀魚は、DHAや動脈硬化を防ぐといわれるEPA、そしてビタミンE、A、B12も豊富に含まれている、栄養豊富なお魚。何と店頭に並ぶ秋刀魚は、養殖なしの100%天然もの。旬を美味しくいただきましょう。

そもそも秋刀魚の旬ですが、大まかに考えると8月から11月、その期間のなかには、「はしり」、「さかり(旬)」、「なごり」という3つの時期があります。私たちが住む日本は四季があり、本来は季節ごとに食べごろとなる食材が違うのです。けれども、昨今では様々な食材が通年にわたって出回っているので、旬がわかりにくくなっています。

ではこの旬の3つの時期を同じ様に、ただ塩焼きにするのではつまらないですね。そこでおススメをご紹介。

はしり・・・脂がほどほどで、身が締まっていてあっさりしているので、「お刺身」。醤油は「再仕込み醤油」。再仕込み醤油は、香り・味・色ともに濃厚なので、つけ醤油として万人受け傾向があります。

さかり・・・やっぱり「塩焼き」。脂が乗っていて旨味も多い。塩を振るのは直前ではなく、30分前ぐらいがベスト、程よく塩味が浸透して生臭さも軽減されます。塩は旨味が凝縮された天日塩がおすすめです。そして、醤油は「濃口醤油」。濃口醤油は五味の全てが調和し、また香りがよい。さらにすだちとの相性も抜群です。

なごり・・・最後は脂があってもなくっても美味しい「煮付け」です。醤油は「たまり醤油」。たまり醤油はとろっとする濃度があり、濃厚で独特の味わいがあります。調理に使うとツヤも出ることから煮物に向いています。

今回は「秋刀魚」「醤油」に注目してみましたが、様々な食材の旬に合わせた調味料の使い方を試していくと、それだけでレパートリーも増えますね。


流山市・森のマルシェのfacebook『調味料歳時記』というコラムを執筆しています。このブログと相互リンクされていますのであわせてご覧ください。(2013年6月1日(土)つくばエクスプレス/流山おおたかの森駅前にて森のみりんマルシェというイベントが開催され、みりんのワークショップを担当しました。)
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2013年9月3日火曜日

月と秋の味覚/調味料歳時記

まだ暑い日が続いていますが、少しずつ秋の気配を感じるようになりましたね。一年の中でも秋は、空気が澄み、月が綺麗に見える季節です。今年の十五夜・中秋の名月は九月十九日(旧暦の8月15日)。暦の関係で、中秋の名月は必ずしも満月になるとは限らないのですが、今年は満月での月見を楽しむことが出来ます。



お月見は中国から伝わり、平安時代には貴族たちが月を眺めて宴会を催しました。農作業する際には月の満ち欠けや暦を頼りにしてきたので、江戸時代になると、秋の収穫を感謝する行事として庶民にも伝わります。ススキを稲穂に見立て、月と同じ丸い団子や収穫した農作物をお供えしました。秋の実りの代表である里芋をお供えする地域もあり(実はお団子より歴史が古い様です)、芋名月とも呼ばれます。

ところで、お月見は十五夜の他に、十三夜、十日夜があります。
十三夜は旧暦の9月13日。十五夜に続き月が美しいとされ、名残の月とも言われます。さらに、里芋の代わりに豆や栗をお供えすることから、豆名月、栗名月としても親しまれています。十日夜(とうかんや)は旧暦の10月10日に行われる収穫祭で、東日本が中心です。3日間晴れると良いことがあるとされています。ちなみに月見の風習は本家中国以外に、台湾、香港、韓国、ベトナムにもあるようです。そしてなんとヨーロッパでも?!秋分の日に一番近い満月を収穫月と呼び、その次を狩猟付きと祝うということです。

調味料歳時記の恒例、関東と関西の食べ方の違いシリーズ、なんと月見のお団子までありました。これは今回初めて知ったのでとてもビックリしました。関東は写真にあるような真ん丸。一方関西では、小芋のカタチに尖らします。
今回の機会を逃すと、次に満月と十五夜が重なるのは八年後です。今年は部屋の明かりを消して、お月見を楽しみましょう。甘辛い醤油味のタレ(醤油・みりん・砂糖・)があとをひく、みたらし団子にして食べてみませんか。

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